侮りがたし 「 渾床の滝 」

薮田織也の雑草子 - 侮りがたし 「 渾床の滝 」

 伊豆は仁科川沿いに走る静岡県道59号伊東西伊豆線を仁科峠方面に上っていくと、仁科川水系本谷川の支流で渾床(コンドコ)沢という水のとても綺麗な川が流れている。この上流に 「 渾床の滝 」というのがあるらしいということで、知人のワゴン R にカメラを積み込んで二人で林道を登った。なんで薮田の車を使わないのかというと、車高が 12cm ないので、林道なんかご法度っすよ。
 
 道すがら 「 渾床の滝 この先 」 という小さな立て札を3回ほど見つけたが、滝らしい滝を見つけることはなく、途中からワゴン R ですら進めないほどに岩がゴロゴロしてきたので歩きに変更。その後、歩いても歩いても 「 渾床の滝 この先 」 の立て札を見つけるだけで、一向に瀑布は現れない。日ごろの運動不足がたたってか、息が上がってきた。

  • 知人 「 ねぇねぇ、滝みたいなのが見えてきたよ」
  • おれ 「 はぁはぁ、どこどこ? 」
  • 知人 「 ほらあれ。もしかして、あれのことを滝って言ってんじゃない? 」
  • おれ 「 なんだい、ありゃ堰堤 (えんてい) だよ。いくらなんでも堰堤を滝あつかいしないだろ 」

 
 
薮田織也の雑草子 - 侮りがたし 「 渾床の滝 」

 知人も俺も西伊豆で生まれ育ったけれど、今まで滝はおろか、西伊豆の観光に興味を持ったことがない。しかも、少しだけ地元をバカにしているきらいがあるため、こんな軽口を叩いていた。
 
 その堰堤から崩れかけた山道を歩くこと数十分、「 ふ~、もう帰ろうよ 」 なんてへたれていたら、幾つ目かの 「 渾床の滝 この先 」 の立て札があった。これまでの立て札よりもちょっとだけ大きい! そして、岩だらけの山道がそこで終わっていることが、本命はもうすぐだと伝えている……気がした。

  • おれ 「 こ、今度こそ滝があるんだよ、多分…… 」
  • 知人 「 え~、でも行き止まりじゃん 」
  • おれ 「 う、うん……。あっ、きっとこの岩を登るんだよ! 」
  • 知人 「 え゛ー! それじゃあ本格的な山登りだよ~。いやだよ~ 」

 
薮田織也の雑草子 - 侮りがたし 「 渾床の滝 」

 最後の立て札の後ろに、人が登れそうな小さな岩がいくつかあった。ここまで来て滝を見ないで帰れるもんかと、知人の呆れ顔を無視して岩を登ってみると………。

  • おれ 「 …あったよ滝…らしきものが… 」
  • 知人 「 ………ち、小っちゃい………… 」

 落差わずか2mほど、滝と呼べば呼べなくもないものがそこにはあった。こんな小さな滝を見るのにワゴン R の底を岩で削りながら林道を登ってきたのかと思うと、ちょっと知人に悪い気がしてきたが、いや、やっぱりこれは滝なんだ。立派で厳かな滝なんだ。誰がなんと言おうと滝なんだったら滝なんだ!

  • おれ 「 すごいなぁ! 滝壺から上がる飛沫で目がかすむよ~ 」
  • 知人 「 …………… 」
  • おれ 「 カメラが濡れちゃうけど写真撮っておこっと! 」
  • 知人 「 …………………… 」
  • おれ 「 よし! 今度は滝の上から撮ってみよ! 」
  • 知人 「 ………帰ろうよお……… 」
  • おれ 「 う、うん………… 」

 というわけで、西伊豆の滝ツアーを心底満喫したバカ二人は、伊豆の遅い紅葉を眺めながら帰路につき、薮田の事務所に向かったのでありました。
 
 知人と二人で事務所に着き、撮った写真をデジタルカメラから吸い出そうとコンピュータを起動した際、ふと気になって 「 渾床の滝 」 を検索してみることにした。

薮田織也の雑草子 - 侮りがたし 「 渾床の滝 」

  • おれ 「 ……ねぇ、ちょっとこれ見てよ。滝マニアが撮った渾床の滝の写真だよ 」
  • 知人 「 ええぇ! 落差 60m って! 本当はこんなに大きな滝だったの!? 」

 どうやら、「 渾床の滝 」 を侮っていたようだ。普段は水量が少ないらしいのだが、雨の後の 「 渾床の滝 」 はすんごいらしい。割と簡単に訪れることができる落差 40mの 「 大滝 」 を 20m も上回るのだから。
 
 地元の友人知人の何人かに 「 渾床の滝 」 のことを聞いてみたが、誰もその存在を知らなかった。う~ん、ちょっと興味が湧いてきたぞ。これから先、伊豆の滝を調べ歩いてみるかな。

 
 
 
 

滝王国ニッポン 日本の滝〈1〉
東日本661滝
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