点と線

 周囲の経営者からよく言われることがある。
 
「あなたの中長期の予測はよく当たるが、どこで勉強したのか」と。
 
 自分を褒めるようでおこがましいとは思うが、確かに当たる。というか、当たって当たり前だと思っている。というのも、何も特別な才能があるからではないからだ。まして、特別に中長期予測の勉強をしたわけではない。普通に会社員をしてきた経験則で予測しているだけだ。経験した点と点を線で結ぶだけで、予測は誰にでもできるのだ。

 
 点とは過去に経験した個々の事象。線はその事象の因果関係だ。未来予測とはこの事象と因果関係を使ってするもの。なにもあらためて言うことでもなく、個人的には誰もが無意識にやっていることだ。ところが経営になると個々の事象(点)とその因果関係(線)を完全に無視したかのような行動をとる経営者が多い。以前はとても不思議だったが、最近になってその理由がなんとなくわかった。
 
 多くの経営者は、この点と線の関係がわからないのではない。複雑に考えすぎるか、または焦るあまり、自らわからなくしているのだ。
 
 浮世草子に「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺のもとになった話がある。
大風が吹いて埃が舞い上がれば、目に入ってめくらが増え、めくらの商売道具である三味線が売れるので、三味線に使われる猫の皮の需要が増えて猫の数が減るので、鼠が増えるために家の箱が鼠にかじられるようになって、結果的に箱屋をやると儲かるのではないか。と、まぁこんな話。
 
 この話の事象と因果関係はかなり無理やりだけど、まぁ、点と線の考えかたはこれと同じ。
 
 えっ?馬鹿らしい?……はは。でもね、俺は思うわけですよ。こうした小学生でも考えられる乗数効果や波及効果を笑っているうちはダメなんだって。今の経営者の多くの人に欠けているのは、物事を単純化することだと思うわけです。複雑にするだけして、最後はエイヤッって人があまりにも多い。また、最初と途中までは点と線のことを考えて目標に向かえるんだけど、途中の結果が思い通りにならないと、線をぶった切ってしまう人が多い。
 
 世の中は、考えかたによっては、経済学者がどうこういうよりも予想以上に単純なんだな。
 
 俺の中長期予測が当たり安いのは、俺が単純なんだからだと思う。
それと、本質を見極められるように常に努力しているからなんだと思う。
 
 どんなに複雑だと思える事象とその因果関係でも、本質を見極められるようになるには、やっぱり普段から本音を語り、相手の本音を引き出し続けることが重要なんだと思う。この辺がちょっと突飛すぎると思う人もいるだろうけど、本質と本音の因果関係については、おいおい書いていきたいと思う。