玉か石かの判断

 俺は 25 歳のときに「世界一の No.2になる」という夢というか野望を抱いて、今に至っている。なぜに No.2なのかというと、俺自身が No.1の器じゃないと思うからだし、また影でコソコソやってる方が性に合っているからという理由もある。俺が No.1の器じゃないと思う理由は、俺自身に人が集まってこないからだ。でも、俺がサポートする社長の周りには、以前よりも良い人が集まるようになる。というか、そうなるように努力している。
 
 No.1の資質というものは、ひとえに人がどれだけ集まってくるかだと思っている。玉石混合でも構わないから、とにかく人が集まってくる人は、社長としての基本的な資質を備えているわけだ。俺の仕事は、この玉石混合の状態から、玉だけが集まってくるようにすることだと思っている。逆に、いかにして石を排除するかということでもある。

 
 実際、今までの No.2としての活動ではこの点をかなり努力してきたため、今では人を一目見ただけで玉か石かの判断がつくようになった。もちろん、人として玉か石かというおこがましい判断ではなく、その人が、社長にとって、または会社にとって玉か石かという判断である。
 
 しかしである。残念ながら、この判断能力は評価してもらえない。なぜなら損害保険と同じだからである。事故が起きないと、「ああ、保険に入っててよかったね」という評価につながらないわけだ。石の人を排除しているため、事故が起きないのである。保険屋の気持ちがよくわかる瞬間なのである。
 
 さて、玉か石かの判断はどんなところでしているのかという話だ。それは至極単純で、自分の利益だけを考えて社長か会社に近づいてきているとわかったら「石」で、お互いに儲けましょうという気を持っていれば「玉」だ。
 
 この判断は、相手と話せば簡単にわかるが、最近は目を見ただけでわかるようになってきた。「玉」の人は俺の目を見て話をしてくれるし、その目はあまり揺れない。ところが「石」の人はあまり俺の目を見ないし、見ても上下左右に絶えず揺れている。
 
 俺の目は知人から言わせると結構危ない目つきらしくて、気の小さな人にはかなり嫌がられる。だから「玉」の人でも目をそらすよ、なんてことも言われたりしている。うん、確かに、海外で観光地に行っても売り子が近づいてこないし、繁華街の怪しげな通りでは黒服が神妙な顔つきで頭を下げてくる。どうやら俺のことをマフィアやヤクザと勘違いしているんだろうな。実際は気の小さい単なるてっぺん禿なオヤジなんだけど…。あっ、マフィアもヤクザも気が小さい単なるオヤジだから、やっぱり俺もヤクザと同じということか…。
 
 そのためもあって、俺自身、あまり人と目を合わせなくなってしまっていることに最近になって気が付いた。ああ、俺も「石」の仲間入りしてしまったのかもしれない…。