ヤクザといえば

 ヤクザといえば、会社を経営していく上で、ヤクザものと係わり合いにならないようにすることは、なかなか難しい。会社が儲かっていればなおのこと、儲かっていなくても、ヤクザと関わることが少なからずある。俺自身も何度かそういう経験をしている。
 
 昔、俺が関わっていたある会社の社長が、よせばいいのにチンピラまがいの某音楽プロデューサーから、ある有名なキャラクターの商品化の話をもらって、デザインを起こしていたことがあった。当然俺は反対していたが、目の前に突きつけられた利益が美味しいからっていう単純な理由で、反対を押し切って始めてしまったのだ。

 
 それから1ヶ月ほどして、どこからか漏れた情報で、そのキャラクターの版権を持つ某テレビ局からクレームがついた。それだけならまだいいのだが、そのキャラクターの原案者であるこれまたヤクザみたいな、というか、実際にヤクザとパイプのある某作家の事務所からもクレームが入った。さらに加えて、そのヤクザ作家と関係があり、チンピラ音楽プロデューサーの面倒を見ていた下っ端ヤクザが怒鳴り込んできた。「誰の許可をもらって商品化なんかしてるんだ!」と、こういう話である。
 
 社長はチンピラプロデューサーから「商品化の権利があるから大丈夫」と聞いていたので安心していたのだが、よくある話でそんな権利は端からない。結局、ヤクザの恫喝にびびった社長は、俺に対応してくれと頼んできた。
 
 対応に出た俺は、商品化は直ちにやめるし、某テレビ局への報告も、権利関係を詳しくしらないうちの会社が独断でやったことだと話すと言って、その場は穏便に済ませた。問題は、この商品化の話を持ち込んだチンピラ音楽プロデューサーの世話をしていた下っ端ヤクザが、某テレビ局からも、ヤクザ作家の事務所からも、疑われ始めてきたという点だ。もし、チンピラプロデューサーが我々に話を持ちかけてきたということが某テレビ局やヤクザ作家の事務所にわかれば、下っ端ヤクザが困る。
 
 俺は某テレビ局に出向き、あのキャラクターの商品化は、俺達の会社が独断で始めたことだと、下っ端ヤクザに約束したとおりに話した。それはそれはしつこく情報の提供元を聞かれたが、「どんな業界でも、ビジネスでの情報提供者の名前を教えることはしません。間接的にでも報道に関係している方ならご理解いただけるはずですが」と言ってシラを切りとおした。
 
 その対応で下っ端ヤクザは気を良くして、それ以降はまったく関与してこなくなった。結果は俺がいた会社の損失だけだ。まぁ生産に入る前だから、デザイン代と時間を損しただけだが、社長にとってはいい勉強になったはずだ。
 
 ヤクザだからといってオドオドする必要はまったくない。普通のビジネス上の取り引きだと考え、道義を通せばいいだけだ。もちろん、悪い話に乗ってはいけないというのが前提だが。